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増殖因子の分泌 [がん]

正常な細胞とがん細胞を比べたら、どちらが早く増殖できるのだろうか?
ほとんどの人は、「がん細胞」と答えるのではないだろうか。しかし、イザというときにしっかり分裂・増殖する能力は正常細胞の方が、はるかに優れている。
前回の注射の例は、小さな損傷の例だが、大事故にあった場合や、大きな手術(たとえば肺がんの手術では、左か右のどちらかの肺を全部切除するか、肺葉と呼ばれる部分を摘出する)を行った場合には、機能が全部回復しないまでも、生命を維持できるまで回復できるケースが少なくない。
こうした危機的状況に出会った時に、生命維持のために細胞の増殖を呼び掛けるタンパクが、がんの研究の初期に「がん遺伝子」と名付けられたタンパクだったのである。
今では、増殖因子と呼ばれており、その名前の方が理解しやすい。
血液の造血幹細胞や皮膚の基底層の細胞など、しょっちゅう分裂を求められる細胞は例外として、正常な細胞にはイザという時以外は、増殖因子の出番は少ない。
細胞ががん化する過程で、がん細胞になる細胞達はこの増殖因子を作り出し、いつでもその増殖因子の刺激を受け止められるように、増殖因子の受容体を細胞膜表面につきだすように変化していく。
1ミリ㎥の中に約100万個の細胞が詰まっているように、がん化の初期は非常に狭い領域で進行して行く。
こうした狭い環境の中で、血液を介さずに、ごく近傍の細胞に増殖因子などを分泌して働きかける仕方をパラクリン(傍分泌)といい、増殖因子を出した細胞がその増殖因子を自分の受容体で受け止める仕組みをオートクリン(自己分泌)と呼ぶ。

細胞が無駄な増殖をしないようp53、RBなどの増殖抑制因子が機能しているのだが、細胞ががん化するとこの監視機能が働かなくなる。この機能の喪失については次回に触れていきたい。
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