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新型コロナウイルス雑記1ーウイススは生物か?

新型コロナウイルスの流行の第6波が世界に押し寄せている。
今頃なぜ?と思われるかもしれないが、あまりにも科学的にナンセンスな情報がTVなどを通じて流されていることにはどうかなと思わざるを得ず、再び投稿することにした。
がん情報にも一部記載したが、生物(動物、植物、真菌、細菌)にはDNAやRNAといった核酸があり、それらの連携プレーにより細胞の複製を可能にしている。
ウイルスには、DNAもしくはRNAのどちらかしかなく、それらと連携するタンパク質で構成されている。人類に害をもたらす細菌と混同されやすいが、細菌は宿主の細胞の内外で増殖できる自己完結だが、ウイルスはDNAかRNAのどちらかしか持たず、増殖するためには宿主の細胞に寄生してその機能に頼らざるをえないのだ。
ウイルスにとって増殖するには、ウイルスにとって増殖しやすい環境を持っている宿主が必要となる。ウイルス発見当初頃にみつかったタバコモザイクウイルスは、たばこの葉っぱにしか感染しない。また、約10年ほど前に宮崎県で牛や豚に感染したウイルスは家畜に特異的に感染する。また、毎年日本のどこかの鶏舎をまるごとダメにするニワトリを標的にしたトリ・インフルエンザウイルスも鳥を重点的に標的として狙ってくる。
今回の新型コロナウイルスは、明らかにヒトを対象にしたウイルスだが、ヒトというのはとてもウイルスにとって理想的な宿主で、地球上の様々な環境に連れて行ってくれて、それぞれの環境にあった増殖への変化を助けてくれている。
また、感染力と病原毒性は同意義ではない。毒性が最悪で20世紀までに多くの地球上の人類の命を奪ったとされる天然痘ウイルスは、研究用に厳重に保存されているものを除けば絶滅されたとされている。
感染の拡大には、適度な病原毒性も大切な要素で、宿主が(ある程度元気で)移動してくれて、次の宿主(この場合ヒトだが)まで連れて行ってくれて、拡大してもらうことが必要となる。
標題の答だが、自己完結で増殖できないウイルスは、20世紀末に発見された病原タンパクのプリオンと共に病原物質として分類する教科書が多い。
感染下の生活については、また次回。


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血管内皮増殖因子:VEGF [がん]

前回、胎盤の形成により、胎児の細胞の分裂と分化が急速に加速化されることについて触れた。
細菌の中には、酸素を効率よく使えず、むしろ苦手とする菌(偏性嫌気性菌)もいるが、哺乳類の細胞には酸素と栄養が必要で、それなしには生存できない。
がん化した細胞も同様で、充分な酸素と栄養が届かない環境で発生した悪性腫瘍は、休眠がんと呼ばれる状態で偶然見つかることがある。手術や検査などで見つかり、病理で調べてみると、明らかにがんの顔つきをしているのに、悪さをできないタイプの腫瘍なのである。

身体の隅々に酸素と栄養を運んでいるのは血液であり、血液を運んでいるのが血管である。大きな手術をすると、切除した範囲に含まれていた血管も切り取られるが、手術後に切除した部分の細胞や支持組織が増殖し、同時に新たな動脈と静脈、毛細血管からなる血管ネットワークが形成される。リンパ管新生もほぼ同様のメカニズムなので割愛する。

がんが一定以上に増殖しようとする時にも、上記の手術時ような血管新生のスキルが使われる。血管から離れた場所に発生したがんは、その無秩序に増殖する性質から、自らどんどん酸欠状態になっていく。この時、血管内皮増殖因子(VEGF)とういう血管を呼び寄せる物質を作れないがんは休眠がんで終わる。

細胞が低酸素状態になった際に細胞内にHIFという転写因子を持つがん細胞だけがVEGFを作り出すことができ、VEGFは細胞外液にパラクリンされ、一番近くを走る毛細血管にたどり着く。

VEGFの受容体(VEGFR)を持つ毛細血管の血管内皮細胞は、酸欠のSOSシグナルであるVEGFに気付き、シグナルの発信地に向けて増殖、浸潤していく。できたての血管は、一層の内皮細胞からなる脆弱な構造なので、新生血管に血流が再開通した時点で、アンジオポエチン1が分泌され、壁細胞と呼ばれる細胞が血管内皮細胞を覆い、新生血管を安定化させる。

こうして新生血管により、安定した酸素と栄養の供給と、細胞外液からの二酸化炭素と老廃物の除去に成功したがん細胞は急速に増殖していく。さらに悪性化したがん細胞は、呼び寄せた血管の中に侵入し遠隔臓器に転移するものもいる。

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エピジェネティクス [がん]

私たちの生体は、60兆個の細胞から成り立っている。
始まりは、両親から1セットずつのゲノムを受け取った1個の受精卵である。その受精卵が、母親の胎内で分裂と分化を繰り返し、約3兆個の人体となって生まれてくる。この間に何が起こっているのだろうか?
できあがった人体の細胞、例えば脳と皮膚の細胞は、形や機能は明らかに異なり、とても同じ細胞から出発したようには見えない。しかし、細胞内の遺伝子を調べれば、脳でも皮膚からも両親から引き継いだゲノムが1セットずつ検出できる。
これらのことは、エピジュネティクスという母親の胎内で起こっている遺伝子の変化を追跡することで説明できる。受精卵は、1週間から10日間かけて、母親の子宮内膜に着床する。着床すると、母親の子宮内膜と胎児との間に、胎盤という構造が形成され、栄養と酸素が供給される。これによって、胎児の細胞の分裂と分化が加速化される。
この加速化が起こった最初の1か月の間に、細胞がどのような集団の組織、臓器になっていくかが決まる。
ヒトの生命を維持するために必要なのは、約27000種類のタンパクだが、そのタンパク一つ一つを作り出すために必要なものも、転写因子と呼ばれるタンパク質なのである。
細胞の分裂と分化の方向性が決まるこの時期に、この転写因子が猛烈に働き、正確にその臓器の細胞になるべく誘導していく。そして、哺乳類のように複雑な構造を持つ生命体になると、ある専門的な機能を持つと、それ以外の自分たちには必要とされないであろう機能には、どんどん封印がなされていく。

DNAの二重らせん構造は、中央がアデニン、チミン、グアニン、シトシンの4種類の核酸が水素結合でつながっており、外側はリン酸でつながっている。遺伝子発現の封印は、このDNAの中央のグアニンとシトシンの結合のシトシン側にメチル(CH3)を付けることでおこる。

白血球のように、全身を駆け回るような機能は、通常の細胞には必要ではないし、造血幹細胞のように絶えず分裂・分化する機能も正常細胞には必要がない。こうした、機能は正常細胞では、メチル化されて封印されている。

細胞ががん化すると、こうしたメチル化されて封印されたはずのタンパクが作られだしたり、がん抑制遺伝子のように細胞増殖を制御するタンパクが作られなくなってしまう。このように、本来、生体が機能するよう作られたメカニズムが、がん化の過程で再度変化することをエピジェネティクスな変化と呼んでいる。

増殖抑制因子と2 hit theory [がん]

がんの増殖を促進する物質「増殖因子」があり、その増殖を抑制するものがある。増殖抑制因子である。
われわれが生活している社会は、われわれにとって無害なものばかりではない。むしろ、避けることのできない有害なものが多く存在する。
放射線は原発ばかりでなく宇宙からも降っているし、太陽から届く紫外線も放射線と同じ電磁波の仲間である。また、空気中に含まれる活性酸素も、体内のNO(一酸化窒素)と結合すると、ONOOラジカルというものとなり、血管や組織にダメージをもたらす。
これらから逃れることは困難で、普通に生活しているだけで、1日に何千~何万ものがん細胞の元となる変異が発生していると考えることができる。しかし、それだけでがん化が進行する訳ではない。

なぜ、がん化への進行が止められているのか?その答えが、増殖抑制因子の存在である。
細胞の集団である組織が損傷した時、その損傷を修復するように仲間の細胞が増殖するが、むやみやたらに増殖が起こる訳ではない。
組織の中で、ダメージを受けていない細胞が選ばれ、選ばれた細胞も自分の状態をチェックして、分裂可能なことを確認してから細胞周期に入っていく。
こうして、むやみに細胞周期に入らないように、細胞の増殖を制御しているのが増殖抑制因子なのである。
細胞の増殖抑制因子は、みずからが存在する細胞自体が損傷した時、細胞周期を停止させ、損傷が回復するまで細胞周期を停止させ、損傷の回復に必要なタンパクを発現させる。
もし、回復不能であることが解れば、その時点でアポトーシスを起こして死んでいくが、ただ死ぬのではなく次に分裂する細胞のために、まだ使える核酸やリン酸などをアポトーシス小胞という袋に詰めて次世代に託す。

増殖を抑制するこのメカニズムは、ただ増殖を促すものよりも精巧である。
われわれのゲノムは、両親から1セットずつの2セットを受け継いでいるので、数々の増殖抑制因子もそれぞれ2つずつ備えている。
増殖因子の異状によるがん化は、受け継いだどちらかの遺伝子異常だけでも起こりうる。
抑制因子はどちらかの遺伝子が機能しなくなっても、異常になっていない抑制因子が機能するようになり、細胞の異常な分裂を制御する。このように、2つの遺伝子が機能しなくなるまで、それまでの機能が保たれることを、2ヒット理論( 2 hit theory )と呼んでいる。
このように、生命を維持する必要なメカニズムが備わっているのは、がん抑制遺伝子だけではないことも解ってきている。たとえば、コレステロールを吸収するために働くタンパクがあり、片方の親から欠損した遺伝子を受け継いだとしても、片方の親から正常な遺伝子を引き継いでいれば、高LDL状態を軽減できるが、両方の遺伝子に異常がみられると重篤な高コレステロール血症になってしまう。

増殖因子の分泌 [がん]

正常な細胞とがん細胞を比べたら、どちらが早く増殖できるのだろうか?
ほとんどの人は、「がん細胞」と答えるのではないだろうか。しかし、イザというときにしっかり分裂・増殖する能力は正常細胞の方が、はるかに優れている。
前回の注射の例は、小さな損傷の例だが、大事故にあった場合や、大きな手術(たとえば肺がんの手術では、左か右のどちらかの肺を全部切除するか、肺葉と呼ばれる部分を摘出する)を行った場合には、機能が全部回復しないまでも、生命を維持できるまで回復できるケースが少なくない。
こうした危機的状況に出会った時に、生命維持のために細胞の増殖を呼び掛けるタンパクが、がんの研究の初期に「がん遺伝子」と名付けられたタンパクだったのである。
今では、増殖因子と呼ばれており、その名前の方が理解しやすい。
血液の造血幹細胞や皮膚の基底層の細胞など、しょっちゅう分裂を求められる細胞は例外として、正常な細胞にはイザという時以外は、増殖因子の出番は少ない。
細胞ががん化する過程で、がん細胞になる細胞達はこの増殖因子を作り出し、いつでもその増殖因子の刺激を受け止められるように、増殖因子の受容体を細胞膜表面につきだすように変化していく。
1ミリ㎥の中に約100万個の細胞が詰まっているように、がん化の初期は非常に狭い領域で進行して行く。
こうした狭い環境の中で、血液を介さずに、ごく近傍の細胞に増殖因子などを分泌して働きかける仕方をパラクリン(傍分泌)といい、増殖因子を出した細胞がその増殖因子を自分の受容体で受け止める仕組みをオートクリン(自己分泌)と呼ぶ。

細胞が無駄な増殖をしないようp53、RBなどの増殖抑制因子が機能しているのだが、細胞ががん化するとこの監視機能が働かなくなる。この機能の喪失については次回に触れていきたい。

がん抑制遺伝子、がん遺伝子 [がん]

遺伝子はタンパクの設計図である。
遺伝子RBがDNAからmRNAに転写され、リボソームに運ばれて、翻訳されることでタンパクであるRBができあがる。
RBタンパクは、がん発生のメカニズムの研究の過程で、1986年に最初に発見されたがん抑制遺伝子だった。このタンパクは、網膜芽細胞腫(Retinoblastoma)という小児に多い悪性腫瘍の原因遺伝子として見つかった。
その後のアポトーシスなどの研究から、このタンパクは正常細胞では細胞周期のG1期で働き、前出のRポイントでチェックが終了するまでS期に進行しないように止めているタンパクであることが解った。
網膜芽細胞腫の症例では、正常なRBタンパクが作られておらず、G1後期の細胞周期でのチェック機構が十分に働かずに、この悪性腫瘍が進行してしまう。
細胞分裂は、時に危険な行為であることについて触れた。ゆえに正常細胞には、必要に迫られた時にはその危機を回避すべく早く正確に分裂する仕組みと、必要がない時には無駄に分裂しない仕組みが備わっている。
よく研修で話すたとえだが、私たちが採血する時に、皮膚を貫通して一番確保しやすい静脈まで注射針を挿入する。細胞は、1ミリ㎥の中に約100万個存在する。注射により、この数に近い細胞が皮膚から血管内皮まで損傷しているはずだが、だいたい15分もあれば出血は抑制される。
この時、皮膚の増殖を促しているタンパクが上皮増殖因子(EGF)、血管の修復を促しているタンパクが血管内皮増殖因子(VEGF)であり、損傷をすばやく修復するとすぐに分泌が止まる。
この細胞の増殖を促すタンパクが、研究の初期にがん遺伝子と名付けられたもので、私たちの健康な生命維持にかかせない役割を果たしている。

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細胞周期( cell cycle ) [がん]

一つの細胞は二つに分裂し、通常の機能を果たし、そして再び細胞分裂の時期を迎える。
この分裂終了時点から、再び分裂を終了する時点までを「細胞周期」という。細胞( cell )の分裂に関する周期( cycle )なので cell cycle と呼ばれている。
細胞周期は大きく、G1期→S期→G2期→M期の4つの時期に分類される。それぞれの時期について確認してみよう。

1.G1期:合成準備期
この時期の細胞は、休んでいる訳ではない。むしろその細胞が持っている果たすべき機能を遂行している時期といえる。胃壁の細胞であれば胃液を分泌し、肺胞の細胞であればガス交換を行っている。ほとんどの正常細胞の多くはこのG1期に存在している。
特に、分裂とは直接関係していないこの時期を、G0期と別建てで表しているテキストも多い。
G1期から、次のS期に入る直前にRポイント( restriction point )という細胞周期に関する重要なチェックポイントがあり、前回記載したその細胞が分裂に適しているかどうかの入念なチェックが行われる。
チェックが正常に終了すると、細胞周期に関連するサイクリンやサイクリン依存性キナーゼと呼ばれるタンパクの仲間達が次々と作られ(転写され)ていく。この時、E2Fという転写因子が核膜を越え、DNAの転写開始位置に侵入して行き、細胞周期を完遂させるために必要なタンパクを転写させる。
分裂に対して、十分な準備ができていないと判断した時には、前出の遺伝子の守護神 p53 が、RBタンパクに指令を届けさせて、E2FのDNA侵入を阻止させる。
Rポイントを越えた細胞は、見事二つの細胞に分裂できるか、途中のチェックポイントにかかってアポトーシスを起こすか、二つに一つの選択しか残されていない。

2.S( synthesis )期:合成期
ここで合成されるのは、DNAだけではない。細胞が生命を維持するために必要な細胞内小器官(ミトコンドリア、リボソームなど)やタンパクなど、すべてが複製される。

3.G2期:分裂準備期
十分にその組織で機能できない細胞が分裂することは危険なことでしかない。
細胞は分裂する前に、この準備期でS期で複製したDNA、細胞内小器官、タンパクなどが正常に機能できるものかどうかをこの時期で入念にチェックを入れる。欠陥のある細胞はここでアポトーシスで死ぬ。

4.M( mitosis )期:分裂期
G2期でのチェックが終わった細胞は、ここでようやく二つに分裂できる。この時期も大きく4つにわけることができる。
前期;この分裂期以外のDNAは、核膜の中で溶けている状態なので光学顕微鏡では観察しにくい。分裂期に入ったDNAは、1セット46本の染色体が2セット(92本)複製されて、凝縮している状態で観察されるようになる。
中期;前期で凝縮した染色体は、46本ずつの1セットずつの2グループになり、細胞の真ん中の赤道面とよばれる部分に集合する。それぞれの染色体の中央には、セントロメアと呼ばれるくびれがあり、そのセントロメアに微小管と呼ばれるタンパクが結合する。
後期:微小管を形作るチュブリンと呼ばれるタンパクは、北極、南極に相当する部分に存在する中心小体というタンパクの集合体を足場にして、染色体を両極に引っ張り始める。
こうして、染色体は二つの細胞に分配されるべく移動を開始する。
終期:染色体や細胞内小器官が、二つの細胞になるべく両極に向かって移動が終わると、新しい二つの細胞の間にくびれができる。このくびれが、どんどん縮んでいき、やがて完全に無くなり、細胞分裂が終了する。

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細胞増殖:分裂前夜 [がん]

前回はアポトーシスによる自然な細胞死の過程があることに触れた。
正常な細胞は、決められた回数だけ分裂し、果たすべき役割が終わるとアポトーシスをおこしていく。では、細胞は毎日毎日減り続けていくのだろうか?
今までに人体は60兆個の細胞から成っている、と書いてきた。特定な疾患にかかっていなくて、生命が維持されている状態では、生体内の細胞数は精巧にバランスが保たれていて、毎日減った分だけ新しく作り出されている。
アポトーシスで死んだ細胞の代わりに、その細胞の近くのまだ増殖能力の余力を残した一つの細胞が二つの細胞に増えていく。この増える過程を「細胞分裂」と呼んでいる。
一つの細胞が、二つの細胞に分裂するということは、大腸菌とか肺炎球菌などの細菌でもやっていることなので、そう難しいことではないと考えられるかも知れない。しかし、一つの細胞が精密に二つの細胞になるということはとても難しく、そしてとても危険なことでさえある。
前に、細胞は自分が生まれて育った環境が、一番居心地がよい、ということについて触れた。正常な細胞が分裂するとき、その細胞は周囲の細胞と情報交換することなく、勝手に分裂するわけではない。1ミリ㎥の中に約100万個共存している仲間の細胞との精巧なネットワークで情報交換を行い、次に分裂する細胞の候補として自分がふさわしいのかどうか、を確認する。
また、分裂する細胞の内部でも、自分が分裂する細胞としての機能と余力を残しているかどうかの確認も怠わらない。この細胞内の監視システムの中心となって働くタンパクが、約30年前からしばしばマスコミでも取り上げられる「遺伝子の守護神」と言われる p53 だ。
正常な細胞では、この p53 が正確に機能し、分裂すべきかどうかを判断し、不必要な細胞増殖をコントロールしている。
少し長くなったので、実際に細胞が分裂する過程である「細胞周期」については次回に触れることにしたい。
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がんとアポトーシス [がん]

アポトーシスという自然な「細胞の死」の形態がある。
ウイルスや細菌感染、火傷などの外的要因により寿命を迎える前に死んでしまうのではなく、細胞の中でその細胞が果たすべき役割を果たせなくなる変異が起こったり、機能を果たせないほどに細胞の老化が起こったりした時に、細胞はアポトーシスという死の形態を選択する。
この細胞の死の選択が、がん細胞と正常細胞の大きな違いの一つであり、がん細胞は自らがその臓器や組織の中で果たすべき役割を果たせなくなっても、アポトーシスを逃れて生き残るように変化( 変異 )していく。
アポトーシスは普通の細胞が迎える自然な死のパターンであり、けっして無駄死にではない。例えば、60兆個の細胞からなる人体では、毎日数千億個の細胞が死に、数千億個の細胞が新しく生まれることで生命維持のバランスをとっている。アポトーシスで死んでいく細胞は、新しく生まれてくる細胞が生きていくために必要な成分をしっかりリレーションしてから死んでいく。
たとえば赤血球のヘモグロビンに含まれる鉄。120日の寿命を迎えた赤血球は細胞膜の弾力が失われ、脾臓のネットに引っ掛かってしまい、1時間に約100億個破壊されてしまう。しかし、ヘモグロビン中の鉄はマクロファージに捕食され、骨髄で新しく生まれる赤血球に供給される。鉄は非常に大切なミネラルだが、このメカニズムがあるおかげで、私たちはポパイのようにホウレンソウを毎日のように食べなくともすんでいる。
がん細胞になると、この献身ともいうべき死の形態を忘れたように振舞う。それどころか、アポトーシスで死んだ仲間の細胞がいたスペースを埋めるようにして増殖する。

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良性腫瘍と悪性腫瘍 [がん]

先週は、「癌腫と肉腫」について書いたので、用語の整理として今回は良性腫瘍と悪性腫瘍について書きたい。
腫瘍は細胞の塊(かたまり)のことだが、良性と悪性の腫瘍がある。
細胞が集まって共同作業をしている集団を組織、組織が集まってある特定の機能を果たすようになった集団を臓器または器官という。さらに、ある目的のために、臓器が協力して大きな役割を果たすシステムを器官系と呼んでいる (消化器[官]系、呼吸器[官]系など)。
後述することになるだろうが、細胞は自分が生まれた場所(組織)で生活することが一番居心地が良い(こうした細胞の性格を「細胞の足場依存性」と呼ぶ)。
良性腫瘍とよばれる段階では、目に見えるほど大きくなる (これも大事で、1m㎥の細胞には約100万個の細胞が詰まっていると考えられる) が、生まれた足場を超えて違う臓器との垣根を越えて浸潤することはない。
良性腫瘍の中で、解りやすいのが イボ (疣贅:ゆうぜい) で、ヒトパピローマウイルスの感染で発生する良性疾患である。
これに対し、悪性腫瘍は隣との垣根を越えて「浸潤(しんじゅん)」するためのスキル(技術)を手に入れる。こうして、あるものは細胞のすき間をかいくぐりながら、あるものは周囲の 0.1mm 四方に張り巡らされている毛細な血管やリンパ管の中に侵入して行くことができるようになる (足場依存性の喪失) 。
こうしてがん細胞は、正常の細胞が自然に寿命を迎えて死んだあとのすき間を埋めるように増殖して、宿主を死に追い込むまで増殖を止めない。
こうして、腫瘍は良性腫瘍と悪性腫瘍に大別することができるが、明確な違いを見つけることは難しい。この良性腫瘍と悪性腫瘍の中間型が境界型と呼ばれるタイプで、女性性器腫瘍(子宮頚部、子宮体部)などで認められる。

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癌腫と肉腫 [がん]

「がん」とひらがなで書いたが、なぜ癌としないのか?
実はあまり重要なことではないのだが(専門家には叱られそうだが)、癌という漢字が常用漢字に含まれていないため、公に使用されるテキストなどでは使いにくい。それで各地の国公立のがん専門施設は△△がんセンターとひらがなで名乗っているのであり、東京の財団法人であったがん専門病院は癌という漢字を使っていたが2011年に公益法人化に伴い「がん」に変えた(常用漢字については専門家がネットで解説しているので検索を)。
私は公務員ではないのでどちらでもかまわないのだが、ここだけ癌という漢字を使いたい。
悪性腫瘍には上皮系の組織から発生する癌腫と、非上皮系(間葉系ともいう)の組織から発生する肉腫の二つに大別される。上皮は身体の外という意味ではなく、身体の外とつながっている組織と考えると解りやすい。消化器系の組織は口から肛門までの1本の管でつながっているし、呼吸器系の組織も最後は肺胞という壁につきあたるがやはり外につながっている。この管の内側にある◎◎上皮と呼ばれる組織から発生する悪性腫瘍が癌腫である。
そして、外とはつながっていない組織、たとえば血管、骨、筋肉、脂肪などに発生する悪性腫瘍は肉腫と呼ばれる。
ちなみに、癌腫になる組織や細胞と、肉腫になる組織や細胞の重量や体積を比べると、圧倒的に肉腫になる組織や細胞が多く占めるが、実際に発生する悪性腫瘍は圧倒的に癌腫が多い。
いろいろなテキストで、この「癌腫」と「肉腫」をあわせたものをひらがなの「がん」である、と紹介されている。
私も今後はひらがなの「がん」で書き進めていこうと思うが、まぎらわしいので癌腫と肉腫の両方について触れる場合は「悪性腫瘍」と表現することとする。
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「がん」について書いていきます [がん]

「がん」とは何物?
ヒトの身体では、60兆個の細胞が共同生活をしている。はじまりは、1個の受精卵。お父さん由来の精子とお母さん由来の卵子から1セットずつ、ヒトとしてのゲノム(「ヒト」など種としての遺伝子の1セット)を頂いた生命体の誕生だ。
この受精卵が様々な細胞へと進化していく(この進化を「分化」という)。最初はどのような細胞にでも分化することが可能な受精卵(ES細胞)は、やがて脳、心臓、肺、皮膚などの専門的な細胞へと分化していき、どんな細胞にも分化できる才能は封印されていく。
長くても、短くともヒトが生きていく過程で、細胞はその生まれた場所で毎日のように再生される。老化の流れで、脳や心臓のように極端に増殖能力が低下する細胞は例外として。血液細胞、皮膚の基底膜細胞、小腸の絨毛細胞など生命の維持に必要な細胞は毎日再生されなければ生きていけない。
この再生の過程で、失敗が起きたものががん細胞だ。
還暦まで2年を切った。こうした発がんのメカニズムについて、書き残して置きたいと思いこのブログを始めた。まだ、現役なので休日などを利用しながら書き足していく予定。
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