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エピジェネティクス [がん]

私たちの生体は、60兆個の細胞から成り立っている。
始まりは、両親から1セットずつのゲノムを受け取った1個の受精卵である。その受精卵が、母親の胎内で分裂と分化を繰り返し、約3兆個の人体となって生まれてくる。この間に何が起こっているのだろうか?
できあがった人体の細胞、例えば脳と皮膚の細胞は、形や機能は明らかに異なり、とても同じ細胞から出発したようには見えない。しかし、細胞内の遺伝子を調べれば、脳でも皮膚からも両親から引き継いだゲノムが1セットずつ検出できる。
これらのことは、エピジュネティクスという母親の胎内で起こっている遺伝子の変化を追跡することで説明できる。受精卵は、1週間から10日間かけて、母親の子宮内膜に着床する。着床すると、母親の子宮内膜と胎児との間に、胎盤という構造が形成され、栄養と酸素が供給される。これによって、胎児の細胞の分裂と分化が加速化される。
この加速化が起こった最初の1か月の間に、細胞がどのような集団の組織、臓器になっていくかが決まる。
ヒトの生命を維持するために必要なのは、約27000種類のタンパクだが、そのタンパク一つ一つを作り出すために必要なものも、転写因子と呼ばれるタンパク質なのである。
細胞の分裂と分化の方向性が決まるこの時期に、この転写因子が猛烈に働き、正確にその臓器の細胞になるべく誘導していく。そして、哺乳類のように複雑な構造を持つ生命体になると、ある専門的な機能を持つと、それ以外の自分たちには必要とされないであろう機能には、どんどん封印がなされていく。

DNAの二重らせん構造は、中央がアデニン、チミン、グアニン、シトシンの4種類の核酸が水素結合でつながっており、外側はリン酸でつながっている。遺伝子発現の封印は、このDNAの中央のグアニンとシトシンの結合のシトシン側にメチル(CH3)を付けることでおこる。

白血球のように、全身を駆け回るような機能は、通常の細胞には必要ではないし、造血幹細胞のように絶えず分裂・分化する機能も正常細胞には必要がない。こうした、機能は正常細胞では、メチル化されて封印されている。

細胞ががん化すると、こうしたメチル化されて封印されたはずのタンパクが作られだしたり、がん抑制遺伝子のように細胞増殖を制御するタンパクが作られなくなってしまう。このように、本来、生体が機能するよう作られたメカニズムが、がん化の過程で再度変化することをエピジェネティクスな変化と呼んでいる。

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